農業の仕事の種類とは?現代農業の多様なキャリアパスを徹底解説
2025年 06月 24日
農業の仕事は、実際には皆さんが想像するよりもはるかに多様で、現代では最先端技術と伝統的な知恵が融合した魅力的な産業分野です。単純な作物栽培から最新のスマート農業まで、様々な専門性を活かせる職種が存在し、食料生産から流通、技術開発まで幅広い分野で活躍できる機会があります。
農業の仕事は「農家」だけではなく、生産から消費者の食卓まで届ける全ての段階で専門的なスキルを持つ人々が活躍している総合産業です。
現代の農業界では、従来の農作業のイメージを大きく覆す多様な職種が生まれています。IT技術を駆使したスマート農業、6次産業化による付加価値創造、そして持続可能な農業への取り組みなど、新しい可能性が次々と開かれています。
ここでは、農業の仕事の種類を体系的に分類し、それぞれの特徴や魅力、必要なスキルについて詳しく解説します。あなたに最適な農業キャリアを見つけるための参考にしてください。
農業の仕事の基本分類
1. 耕種農業(作物栽培)
耕種農業は、土地を耕して種や苗を植え、作物を育てる最も基本的な農業の仕事です。季節の変化と自然のリズムに合わせて働く、農業の王道とも言える分野です。
稲作では、3月の苗作りから始まり、5月の田植え、9月の稲刈りまでの約半年で収穫できるよう米を育てます。収穫後の10月から2月までは土づくりを行い、来年の稲作に必要な養分を補給していきます。
野菜栽培は露地栽培と施設栽培に分かれます。露地栽培では自然環境の中で作物を栽培し、多額の初期投資が不要である代わりに、災害などの環境変化を受けやすいのが特徴です。一方、施設栽培はビニールハウス内で栽培するため自然環境の影響を受けにくく、温度や湿度をコントロールできるため年間を通して作物を栽培できます。
果樹栽培では、りんご、みかん、ぶどうなどの果物を栽培します。果樹は一度植えると長期間にわたって収穫できるため、長期的な視点での管理が重要になります。
花き栽培は観賞用の花や植木を育てる仕事で、キクなら3月から4月に苗を植えて8月から9月に収穫、チューリップなら10月から12月に球根を植えて3月から5月に収穫します。
2. 畜産農業(家畜飼育)
畜産農業は、牛・豚・鶏・馬などの家畜を飼育し、肉・乳・卵などの畜産物を生産する仕事です。動物たちの健康管理や飼育環境の整備、繁殖計画など、専門的な知識と愛情が不可欠です。
酪農は乳用牛を育てて牛乳を生産する仕事で、平均所得は774.4万円と農家の中でも所得が高い分野です。牧場の管理を行ったり、エサである牧草を栽培したりして、牛を健やかに育てるのが大切です。
畜産では食肉用として牛や豚、鶏などの家畜を育て、出荷する仕事です。主な仕事は、エサやりや掃除といった動物たちのケアで、余計なストレスを与えず、ケガや病気に注意しながら、出荷できる大きさに育てていきます。
3. アグリビジネス(農業関連ビジネス)
アグリビジネスは、農業を支える資材の製造・販売から、農産物の流通・販売まで、農業に関連する幅広いビジネス全体の総称です。
農業資材メーカーでは、種苗、肥料、農薬、農業機械などを製造・販売します。新しい品種の開発や安全性の研究など、農業の発展を技術面から支える重要な役割を担っています。
流通・販売は農産物を集荷、加工、販売する仕事で、生産者と消費者を結びつける重要な役割です。品質管理や衛生管理の知識が求められ、工場や物流センターが主な勤務地となります。
現代農業の新しい仕事の種類
スマート農業関連職
近年では効率よく農畜産物を生産するために、スマート農業の需要が高まっています。IoTエンジニアは農業機械の自動化や農畜産物の栽培・育成データを残すためのプログラミングや企画設計を行います。平均年収は500万円で、エンジニア経験やエンジニア系・理工系学校の卒業が求められます。
ドローンパイロットはドローンを使用した農薬や肥料の散布、収穫した農作物の運搬、植物の種をまくなど様々な作業を行います。平均年収は469万円で、希少性の高い仕事として注目されています。
農業支援・コンサルティング職
農業コンサルタントは農業経営面での課題について農家にアドバイスし、収益最大化に向けた課題の解決方法を提示する仕事です。平均年収は610万円で、農業経営に関する知識が不可欠です。
農協職員は全国にある農業協同組合で農家をサポートしています。農作物の栽培方法や農機具の使い方、農家の経営方法など農業に関するアドバイスを行うのがメインの業務で、平均年収は510万円です。農業関連の仕事に就く際は、農家の仕事で給料手渡し、確定申告は必要?といった税務面の知識も重要になります。
IT・デジタル農業職
農業ECサイトの運営者は農家が生産した農畜産物をネットショップで販売する仕事です。野菜や肉を買いたくなるように写真やサイト内の配置、文章などを決めることがメインの仕事で、平均年収は283万円です。
農業マーケティングは一般企業で行われている「マーケティング」の考え方を農業に取り入れ、農作物をどのように売っていくかの販売戦略を立てる重要な仕事です。
農業の仕事に就くための道筋
未経験からのスタート
農業に興味はあるけれど、経験がないから不安という方も多いでしょう。しかし、現代では未経験者向けの研修制度や就農支援プログラムが充実しています。
農業大学校や専門学校では体系的に農業の知識や技術を学ぶことができます。理論だけでなく、実習を通じて実践的なスキルを習得できるのが強みです。
自治体・国の就農支援制度では各道府県の農業大学校や、農林水産省などが実施する研修制度、新規就農者への補助金、農地の紹介など、手厚いサポートが受けられる場合があります。
実践的な経験の積み方
インターンシップやアルバイトで実際に農家で働きながら、現場の雰囲気や具体的な作業内容を肌で感じることができます。これが、自分に合うかどうかを見極める最も良い方法の一つです。
農業バイトを始めてみると、農作業のやりがいや大変さがわかりますし、さらに農業の経験が就職する際の武器になります。実際に農業現場で働く際の農家のトイレ事情は実際どうしてる?といった生活面の実情も事前に知っておくと、より現実的な就農準備ができるでしょう。
農業の仕事の魅力と将来性
安定性と社会貢献
農業関係の仕事は、業績が安定しているのが特徴です。農業は食料を作る仕事なので、人間が食べることをやめない限り永遠に続きます。そのため、安定志向の求職者にピッタリの職業です。
技術革新による可能性
ロボット技術や情報通信技術(ICT)を駆使して作業効率化を図るスマート農業という新しい分野の仕事も出てきており、農業の可能性は大きな注目を集めています。これらの新しい仕事の登場によって、地方の活性化や人材不足、国際競争力の強化など、農業界が抱えるさまざまな問題の解決も期待されています。
6次産業化の展開
近年は、野菜生産+農家民宿、酪農+加工品販売など、耕種・畜産・アグリビジネスの垣根を超えて事業を行う農家さんも多くみられます。これは生産者(1次産業者)が加工(2次産業)と流通・販売(3次産業)も行い経営の多角化を図る6次産業化と呼ばれ、政府もこの動きを推進しています。
あなたに適した農業の仕事を見つけるために
農業の仕事は本当に多様です。どんな働き方がしたいのか、どんなことに興味があるのかを考えることから始めてみましょう。
体を動かすのが好きで、自然の中で働きたいですか?それなら生産現場での作業が向いているかもしれません。新しい技術やデータ分析に興味がありますか?スマート農業や研究開発の分野も面白いでしょう。人と話すのが得意で、地域を活性化したいですか?農業コンサルタントや観光農園の仕事も考えられます。
大切なのは、「学びたい」という意欲と、「食」への情熱です。まずは情報収集を積極的に行い、気になる仕事があれば、ぜひ見学や体験に足を運んでみましょう。
日本の豊かな食を支え、未来を創造する農業の仕事。あなたもその一員として、新たな一歩を踏み出してみませんか?農業という産業は「農産物の生産」という仕事だけでは成り立たず、多くの人・企業が関わり合って成り立っているのです。どの仕事が欠けても、私たち消費者に農産物は届きません。





